高精度放射線治療システム Novalis Tx
ノバリスは、回転できるライナック(直線加速器)ベースの照射装置と患者用寝台(ExacTracロボティックカウチ)の精緻な動きにより、病変に対して3次元的に照射できるように工夫され、さらにマイクロマルチリーフコリメータを組み合わせることで病変の形状に応じた立体的照射を可能にした放射線治療装置です。さらに放射線量の強弱を調整しながら病変のみに高線量を照射する強度変調放射線治療(IMRT)を実施することが可能な装置で、誤差精度は1mm以内とされています。

Novalisは、脳腫瘍、脊椎、肺および前立腺への照射など、多様な放射線治療を行うための機能を備えています。
代表的な照射方法

ノバリスの特長
- フレーム固定を必要としないため低侵襲です。
- エグザグトラックにより正確な位置合わせが短時間に可能です。
- ガントリー(放射線出口)に装備された幅2.5mmのマイクロマルチリーフコリメータにより病変の形状に合わせた照射を行います。

保険治療対象疾患
- 頭頚部腫瘍(頭蓋内腫瘍を含む)
- 脳動静脈奇形
- 脊髄動静脈奇形
- 直径5センチ以内で転移病巣の無い、原発性肺がんまたは原発性肝がん
- 3個以内で他病巣の無い、転移性肺がんまたは転移性肝がん
上記以外の疾患は基本的に自費診療となりますが、強度変調放射線治療(IMRT)による体外照射の保険適応となる場合もあります(脊椎腫瘍など)。
ノバリス治療の手順


治療部位に応じた固定具を作製します。作製時間は20〜30分程度で痛みなどはありません。同時に治療計画用のCTを撮影します。必要に応じてMRI撮影も行います。


病変の部位、大きさに合わせて最適な照射法を決定します。そして治療計画通りに照射されることを模型(ファントム)を使ってテスト確認します。治療計画の作製と検証には時間を要するため治療は数日後から開始します。



ノバリスについて
私たち脳神経外科医は手術するときに顕微鏡を使用します。病変部を拡大して、「よく見ながら」手術操作を行うためです。一方で放射線治療は「目に見えない」放射線を用いて治療を行います。ですから、一般的な脳神経外科医は放射線治療に理解や馴染みがあまりありません。
かつては私自身も手術を好む一般的な脳神経外科医でしたが、22年間で約2200例の治療実績を持つ茅ヶ崎徳洲会総合病院脳神経外科・ガンマナイフセンターの一員に加わったことがきっかけで、放射線治療に携わることとなりました。
2012年10月に湘南藤沢徳洲会病院ヘ移転してからは、脳、脊髄、末梢神経疾患に対する手術治療を行うとともに、ノバリスという新たな放射線治療装置にも取り組んでいます。ガンマナイフ治療から得られた定位放射線手術の経験を活かしながら、ガンマナイフ時代よりも幅広く、そして緻密に、脳・脊椎脊髄疾患に対する定位放射線治療を行いたいと考えています。
脳神経外科部長 小佐野 靖己