胃腫瘍のESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)に関する論文の概要

論文タイトル

Comparing a conventional and a spring-and-loop with clip traction method of endoscopic submucosal dissection for superficial gastric neoplasms: a randomized controlled trial (with videos)

筆頭著者

Mitsuru Nagata(永田充)

誌名

Gastrointestinal Endoscopy (GIE) 2021 Vol93(5), 1097-1109 論文はこちら

ESDは胃カメラや大腸カメラから出した電気メスで、癌などを切除する手技です。

ミリ単位の精密な操作が求められるため難易度が高く、処置に長い時間が必要で、穿孔(胃や腸の壁に穴があくこと)などの合併症のリスクが高いとされています。

そのため、ESDの手技を簡単にするために、S-Oクリップと呼ばれる処置具が開発されています。

しかし、S-Oクリップは、大腸ESD用に開発されたものであり、胃ESDでの有効性は明らかではありませんでした。

S-Oクリップ(ゼオンメディカル社)。
クリップ(洗濯ばさみのような処理具)の先端にばねとヒモが付いています。

そこで、今回の研究では、以下の2つの方法をランダム化比較試験で分析しました。

  • 従来の胃ESDの方法
  • S-Oクリップを用いた新しい胃ESDの方法

結果、胃ESD施行時間(中央値)は、S-Oクリップを使用した群で統計学的に有意に短縮しました。

  • 従来の方法で治療した群:52.6分
  • S-Oクリップを使用した群:29.1分

論文の意義

粘膜の下が見えていない状態です。病変の切除が困難で、盲目的な操作になりやすく穿孔(胃腸の壁に穴があくこと)のリスクも高まります。
S-Oクリップを用いると、切除したい粘膜の下の組織に適切な張力が働き、切除しやすくなります。また、切除したい部位が見えやすくなるため、安全性も上がります。

S-Oクリップを用いると、胃ESDの施行時間が短くなる可能性が高くなるため、患者様への負担を軽減することが出来ます。

また、粘膜の下の切除したい部位が見えやすくなり、盲目的な操作を避けられるため、穿孔などの合併症の予防の観点から有用な方法と考えております。

今後も、患者様にとって安全で負担の少ない治療を目標に、精進して参ります。

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