痛みとは?

痛みとは、他人には分からない、不快な感情(情動)です。他人にどれだけ自分の痛みを伝えても、どれくらいの痛みなのか、他人には分かりません。
そして、痛みの捉え方はその人の経験から得られるもののため、痛みの程度は同じケガをしたとしても、人それぞれ異なります。

痛みの病期と対応

痛みは、「急性痛」と「慢性痛」の2つに分けるられます。

急性痛とは…

大体1か月以内でよくなる痛みのことです。例えばケガしたときの痛みや捻挫、打ち身などがこれに当てはまります。痛みへの対応方法としては、基本的には安静が必要です。

慢性痛とは…

3か月以上続く痛みのことを指します。慢性痛は、じーっと安静にしていることで、痛みが強くなっていく場合があるため、対応としては少し痛みがある程度で動かす・動いてもらうことが必要になります。

痛みはどこで感じるの?

痛みはどこで感じるのかというと、ケガなどをして皮膚で痛み刺激が発生し、この刺激が脊髄を通って頭(大脳)まで伝わって初めて「痛い」と感じます。

3か月以上続く痛みである慢性痛は、ケガなどが治って痛み刺激がなくなっても、脊髄で興奮が起きてしまい、痛みの信号が頭にいくことで痛みが長引くと考えられています。

下降性疼痛抑制系

人は痛みを感じると、今度は逆に頭から脊髄を通って、過剰な痛みの伝達を抑える仕組みがあります。楽しいことをしたり、何かに集中しているときは下降性疼痛抑制系が働きますが、不安になったり、痛みのことばかり考えてしまう、うつ状態になったりすると、働きが鈍くなります。

痛みの悪循環(痛みの慢性化の原因)

痛みの慢性化には、「痛みの悪循環」という考え方があります。

「痛みの悪循環」とは…

ケガなどの外傷があると、痛みの物質が作られて、知覚神経を刺激して、脊髄・頭と伝わって痛みを感じます。痛みを感じると、脊髄から交感神経と運動神経という神経を刺激して、血管収縮や筋収縮が起きます。血管ならびに筋収縮が起きてしまうと、局所的に血管の流れが悪くなってしまい、流れていくはずだった酸素が組織に運ばれなくなってしまい、痛みの物質ができやすくなる、という回路をグルグルグル繰り返すことによって、痛みが持続することを言います。

痛みの恐怖回避モデル(慢性痛の原因の1つ)

これは痛みの悪循環とは違い、その人の「痛みに対する捉え方」の問題です。

通常、ケガなどの外傷で痛みが生じても、痛みが軽くなってくると回復の方向に向かいます。
しかし、ケガをして痛みが起きた後に、不安や恐怖を与えるような情報が入ってきてしまうと、「痛みの破局的思考」がおこることがあります。
「痛みの破局的思考」とは、反芻(痛みのことばかり考えてしまう)、拡大視(痛みが自分の中でどんどん大きくなっていったり、痛みの部位が増える)、無力感(やる気がなくなる)の3つの要素から成り立っています。この痛みの破局的思考は、恐怖や不眠、不安を煽ります。
それによって、痛みに対する警戒心や回避行動が起きます。これは、例えば起きると痛くなるような症状があると、痛みを回避するためにずっと寝たきりになってしまい、それによって筋力が低下したり、うつ状態になってしまったりします。このような状態になると、もともとあった痛みがどんどん修飾されて強くなってしまったりします。この痛みの破局的思考を食い止めるには、痛くても痛くない範囲で動くことや、痛みを分析して対処することでうまく付き合っていくことが重要になります。

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