高精度放射線治療装置

2019年7月、高精密度放射線治療センターでは、高い安全性と高機能を両立した高精度放射線治療装置Versa(バーサ)HDを導入しました。これにより、2012年の新築移転時に導入した、Novalis Txとの2台体制となります。

Versa HDとNovalis Txの比較

Versa(バーサ) HDは、高い安全性のもと複雑ながんの治療が出来るように設計された、患者さんに優しい高精度放射線治療システムです。高線量で高速の照射が可能で、照射時間や回数を減らすことができます。がんの形状に合わせた精度の高い照射、呼吸性移動を考慮した照射機能なども備えており、VMATを始めとする先進の放射線治療がこれまでにない高いレベルで可能になります。
また、放射線を照射しながら3D線量分布CTを撮影するエピグレイシステム(EPI Gray)を搭載しており、治療計画どおりに照射できているかを確認することができます。

より短時間で治療が可能

マルチリーフ・コリメータ

照射する範囲を調整する160枚の金属のリーフが、従来の2倍の速度で駆動し、高精度の治療が短時間で実現します。
大きな腫瘍・複数の腫瘍への同時照射にも対応可能です。

高線量率モード搭載

FFFビーム(Flattening Filter Free:平坦化フィルタを介さない)にて照射を行うことにより、非常に高い線量率を得ることができます。

より正確な治療位置へ補正

6軸による位置補正寝台

コンピュータが算出した補正位置へ、治療用寝台が移動。6軸駆動の高精度な位置合わせにより、治療計画用CTを撮影した状態を再現します。

Exac Trac (イグザクトラック)システム

部屋に埋め込んであるX線カメラが、その日の患者さんの状態を撮像。治療前に撮影したCT画像を照合し、位置のずれを自動計算します。

自然呼吸で患者さんに優しい

呼吸性移動対策

コーンビームCT装置を用いたX線画像で呼吸状態を観察し、横隔膜が所定の位置に来たタイミングにのみ照射。自然呼吸で治療できます。

高い治療品質と安全性

照射線量チェックシステムEPI Gray(エピグレイ)

照射中に3D線量分布CTを取得でき、治療計画通りに照射が行えているかを確認することで、高い安全性を実現します。

Versa HDの特長

患者さんに優しい

体幹部の腫瘍は、呼吸に伴って移動します。従来は息を止めたり、腹部を圧迫することで呼吸性移動を低減させていました。Versa HDには呼吸同期システムが備わっており、呼吸のタイミングに合わせて照射することで、呼吸を制限することなく、自然呼吸のまま治療が可能です。

さらに、治療室にはX線撮影装置が埋め込まれており、治療台に患者さんが横になった時、事前に撮影したCT画像と、X線撮影した画像を自動で照合。ずれを補正し、寝台が動いて位置を微調整し治療計画CTを撮影した時に近い状態を再現します。
疼痛が強く治療計画のCTを撮影した時と同じ姿勢が取れなかったり、体重減少など体形が変化したりすると、治療計画時の再現が困難な場合があります。このような場合でも、コンピュータが最適化を行います。治療計画を再作成せずに済む場合もあり、患者さんの追加負担なく治療が可能です。
また、自動患者認識機能を有しており、照射準備中の患者さんを認識すると、必要な固定具などが表示されます。照射ミスなどヒューマンエラーも低減できます。

高い治療品質と安全性

日常診療で使える線量確認システムとしては日本初のエピグレイシステムを搭載しており、実際にかかった線量を確認できます。 回数の少ない定位放射線治療では、例えば肺がんの1回照射の場合、28グレイという大線量を照射します。ちゃんと治療計画通りに当たっていなければ危険な照射量です。線量確認なしでは済まされません。
エピグレイシステムは、放射線照射中に3D線量分布CT を収集し分析することで、治療中に起こりうる様々なエラーを検出します。このようなセーフティネットをもつことで、治療の精度と安全性を高めています。

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