瘢痕(はんこん)について

瘢痕ってなに

瘢痕(はんこん)とは、傷跡のことです。
擦り傷や切り傷、火傷(やけど)、手術の傷跡など様々な原因で瘢痕ができ、一般的に傷が深いほど目立つ傷になり、浅い傷であっても範囲が広いと気になる状態になります。
瘢痕は、形態と症状から以下の4つに分類されます。

成熟瘢痕

最初は赤くて痛い傷も、時間の経過とともに治まり、成熟期に至ることで、肌色・白色に近づいていきます。この通常の傷の治っていく経過で残った傷跡を「成熟瘢痕」といいます。
基本的には、治療の必要はありませんが、顔面や前腕、下腿などの露出部、頭部で禿髪を伴う場合には、整容的な改善を目的として、手術の適応になります。

肥厚性瘢痕

炎症がなかなか引かない傷跡で、赤くみみずばれのように盛り上がったものを「肥厚性瘢痕」といいます。真皮深層に達する深い傷や、肘や膝、上口唇・頸部など体が動くと伸び縮みする部位に傷ができると、肥厚性瘢痕になりやすいといえます。関節が動くたびに瘢痕が引っ張られてしまい、その都度炎症が起こるので、赤く盛り上がった状態が続き、かゆみや痛みなどの症状があります。

1年から5年くらいかけて、成熟瘢痕に移行するので、ステロイドテープ療法などの保存的治療を主体に治療を行ないます。

ケロイド

ケロイドは、見た目は肥厚性瘢痕に似たものですが、発症に「ケロイド体質」が大きく関わっており、真皮表面のわずかな傷でも発症してしまうことがあります。
ケロイドの発生は、遺伝や人種など様々な要因が絡んでいて、人種では、黒人>黄色人種>白人の順に多いとされています。また、痛みやかゆみ、赤みなどの症状は、肥厚性瘢痕よりも強く生じます。
外科的治療を行なうことで症状がさらに悪化することがあるため、耳垂のピアスケロイド以外は、原則として手術は行ないません。

瘢痕拘縮

傷跡が引きつれを起こし、関節や頸部の可動域制限などの機能障害を起こしてしまうものを「瘢痕拘縮」といいます。
機能的な改善の目的で、植皮術、皮弁形成術などの手術の適応になります。

外科的治療法

外科的治療の絶対的な適応は、瘢痕拘縮、相対的適応は、成熟瘢痕や肥厚性瘢痕です。

傷跡の周囲をジグザクに切って縫うことで、縫合線にかかる力を分散させ、破線効果によって、瘢痕をぼやかすW形成術とZ形成術、体の別の場所から皮膚を採取し移植をする植皮術や皮弁形成術などがあります。

額部の縦の成熟瘢痕に対するW形成術
左耳垂のピアスケロイドに対する形成術と術後放射線照射
下腹部の肥厚性瘢痕に対する外科的手術
右手熱傷後瘢痕拘縮に対する全層植皮術と皮弁形成術
頸部熱傷後瘢痕拘縮に対しての全層植皮術と皮弁形成術
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