舌小帯・上唇小帯短縮症の手術療法

舌小帯・上唇小帯短縮症の手術療法

舌小帯とは、舌の裏側についているヒダのこと。
このヒダが生まれつき短かったり、ヒダが舌の先端に近いところについていることがあり、このような状態を舌小帯短縮症と言います。

典型例では舌を前に突き出すと、舌の先端にくびれができ、ハート型の舌になります。
  • 舌小帯は舌の運動機能の調節や舌の後退を調節する役割を担っています。
  • 舌小帯は発育とともに徐々に舌尖部から徐々に後退していき、目立たなくなっていきます。

この舌小帯の変化が起こらず舌の前方や上方への動きが制限される状態を舌小帯短縮症と言います。
※小児の舌を挙上する動作は4歳前に完成するので、そのことも考慮した治療時期の判断が必要です。

舌小帯短縮症の程度

軽度

舌小帯が細い紐のように見えるが、舌先を上あごにつけたり、口の横につけたりすることは自由にできる。日常生活での障害はほとんどみられない。

中等度

舌を前に出したときに先がハート型にくびれる。舌小帯もしっかりした白い紐状やヒダに見えたり、膜のように見える。舌先を上あごにつけようとしてもつけられず、口の開き方を小さくすれば、なんとか上あごにつけられるという状態。

重度

舌を前に出そうとしても下くちびるぎりぎりくらいまでしか出せず、舌を上にあげることができないので、舌小帯が舌の裏に隠れて、よく見えない場合もある。
※中等度以上の場合は治療(手術)を考慮します。

舌小帯短縮症 何がいけないの?

新生児期~学童期まで、各発達段階で以下のような症状がみられることがあります。

  1. 哺乳障害
    吸啜が上手くできずに、体重増加不良や母親の乳頭痛などが生じてしまう。
  2. 摂食障害
    食塊を左右や後方への送り込みができない。
    ※管楽器の演奏ができなかったりアイスクリームを舐めることができないなどもあります。
  3. 構音障害
    主として舌の先端を上顎の前歯に接触させる必要があるタ行・ナ行・ラ行に歪みが生じます。

当院での方針

当院出生で出生後早期に哺乳障害、吸啜時の母の乳頭痛などあればNICUで粘膜麻酔下に舌小帯切離を行います(切離のみで縫合しません)。
それ以降で舌の運動制限や構音障害を来す可能性のあるものは1歳をめどに原則日帰り入院で全身麻酔下に舌小帯切離、縫合(舌小帯形成術)を行います。

構音障害が明らかな例は、一度リハビリで評価してから手術を考慮します。

局所麻酔下での安易な切離は、十分切れなかったり出血や再癒着などの可能性も高くなるため、標準術式としては全身麻酔下に舌の可動域を確認しながら確実に切離して溶ける糸で縫合する方法としています。

上唇小帯短縮症について

  • 上唇の真ん中にある粘膜のヒダを上唇小帯と言います。
    これが歯茎の頂点まで伸びていると、上唇小帯短縮症、または上唇小帯付着異常と呼ばれます。
  • 成長と共に徐々に歯茎から後退していき目立たなくなっていきますが、これが不十分であると上歯の正中離解(すきっ歯)になります。

当院での方針

乳児期以降、正中離解(すきっ歯)が疑われる場合、日帰り入院、全身麻酔下に上唇小帯切離、縫合を行います。
単独で行うことは少なく、舌小帯手術時に予防的に手術をする例が多いです。

上唇小帯短縮症
術前
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舌小帯短縮症
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