小児鼠径ヘルニアに対する手術療法
小児鼠径ヘルニアに対する手術療法
小児鼠径ヘルニアとは?
鼠径ヘルニアは、赤ちゃん30人に1人の割合で存在するといわれており、子どもでは頻度の高い病気です。この病気は、おなかを包んでいる腹膜から連続する袋がおなかの外へ延びたままになっており、この袋の中に腸管や卵巣が入り込むようになった状態です。女児では子宮を支える靱帯の1つ(円靭帯)が、男児では精巣が下降することに関与しています。この袋は生後には閉鎖するのですが、それが開いたままであることが原因と考えられています。中にはお水が溜まり、陰嚢水腫となることもあります。腸管が袋の中に入り込んできても、おなかの中に容易に戻る状態であれば心配する必要はありませんが、脱出した腸管が腹腔内に戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」という状態では注意が必要です。嵌頓の状態では、子どもは機嫌が悪くなり、ふくらんだ部分は硬く、触ると非常に痛がり、次第におなかが張ってきて嘔吐するようになります。この状態を放置すると腸管の血行障害を起こし、最終的には腐った腸管を切除する緊急手術が必要になることもありますので、このような状態が疑われた場合、早めに来院して下さい。生後1年くらいまでは、この袋は自然に閉じる可能性があると言われていますが、それ以降は自然に治る可能性は少なく、治すには手術が必要です。
手術までの流れ
当院では鼠径ヘルニアなどの手術は、原則として日帰り、または1泊2日で行っています。手術日は毎週水曜です。手術は全身麻酔で行うので、主として麻酔をかけるための術前検査として、手術の前の週の木曜か金曜に採血とレントゲン、心電図の検査を外来で行います。
入院、手術、麻酔の説明は外来検査時に行い、手術当日の朝入院して手術を行います。
特に問題なければ、鼠径法の場合は当日夕方、腹腔鏡手術の場合は手術の翌朝退院となります。
退院後は基本的に普段と同じように過ごして頂いて構いませんが、1週間後に外来で診察を行いますので、それまで激しい運動は避け、入浴はシャワーのみにして下さい。
その後2週間くらいは創部に直接当たるような運動などは避けてください。
手術方法には従来から行われている
- 鼠径部を1.5cmほど切開し、袋の根元を糸でしばる手術(鼠径法:Potts法など)と
- 最近行われるようになった腹腔鏡下根治術の2つがあります。
いずれの手術も腸管や卵巣が脱出していれば腹腔内にもどし、腹膜から連続する袋を根元でしばる高位結紮術です。嵌頓して腸管が腐っている場合にはかなり傷を大きくして、おなかの中の状態を調べる必要があります。男児の場合は精巣に向かう血管や精管が袋についており、損傷しないように注意が必要です。
従来法(鼠径法)による手術
鼠径部を1。5cmほど切開し袋の根元を糸でしばる手術です。男児では精管・血管を袋から剥がすため術後に陰嚢が腫れたり痛みが残ったりすることがあります。合併症としては精管損傷・血管損傷・膀胱損傷・腸管損傷・神経損傷などの可能性があります。また片側の手術の時は対側発生といって、反対側のヘルニアが出てくることが5〜10%程度の確率でみられます。
腹腔鏡下鼡径ヘルニア手術
この手術は1995年に徳島大学で開発された比較的新しい手術です。
腹腔鏡という、お腹の中を直接観察できる直径3mmの内視鏡(カメラ)を使用します。おへその中央に3または5mmの切開を行いカメラを挿入し、二酸化炭素でお腹を膨らませテレビモニターに映してヘルニアの出口の穴(ヘルニア門)を観察します。その後、おへその下に2mmの切開を加えて鉗子という細いマジックハンドのような器具を入れ、鼠径部からヘルニア用に作られた特殊な針を使用してヘルニア門の周囲に糸をかけ閉鎖するというものです。傷が非常に小さく臍の中を利用するので術後に傷はほとんどわからなくなります。また、術野が腹腔鏡で拡大されるため、以前の手術に比べ精管・精巣動静脈を愛護的に扱えるようになり、術後の陰嚢の腫れもみられません。しかし腹腔鏡での手術が困難な場合には、途中から通常の手術に変更する場合があります。
腹腔鏡下鼡径ヘルニア手術の利点と欠点 ~従来法と比べて~
利点
- 傷が小さく目立たない
従来は1.5cmほどの傷でしたが、5mmほどの傷になり傷が目立ちません。 - 反対側のヘルニアの確認ができる
膨らんではないけれど、反対側に鼠径ヘルニアの袋が存在することがあります。腹腔鏡では反対側も観察できるため、もしあれば同時に手術が可能です。(左右手術しても針の傷が1カ所増えるだけです) - 鼠径部の臓器の損傷が少ない
鼠径部には男児なら精管・精巣動静脈が走っています。女児なら子宮を固定する靱帯(円靭帯)が走っています。従来法ではこれら臓器を牽引したり、剥がしたりしますが腹腔鏡手術ではこれら臓器を牽引しません。その分、損傷や精巣の挙上・萎縮のリスクが低いと考えられ、出血による腫れもありません。
欠点
-
気腹
お腹の中を見えるようにするために二酸化炭素ガスを腹腔内に注入します。急にお腹が膨れるために、血圧低下や換気不良などが報告されています。当院ではそのような経験は今のところありません。 -
視野が狭い
カメラには死角があるため、腹腔内の他臓器損傷のリスクが極わずかですがあります。 -
費用がかかる
腹腔鏡の器材は高価なため、手術費用が従来法よりもかかります。
年齢や保険の自己負担率などで変わるので、事務に確認して下さい。 -
歴史が浅い
まだ開発されてから25年ほどの手術なので、数十年先の結果はわかっていません。
その他
- 安全性は?
どちらの手術も当院では現在まで大きな合併症はみられておらず、安全に行えています。 - 手術時間は?
どちらも30~60分ほどで、大きな差はありません。 - 再発率は?
鼠径法で0。5%、腹腔鏡で0。5-1%の再発があるといわれています。 - 術後経過は?
お腹を膨らませることによるものか、麻酔の深さによるものなのか原因ははっきりしませんが、術当日に関しては腹腔鏡の場合は食事があまり食べられなかったり、吐いてしまうことがあり、当院では原則鼠径法では日帰り入院、腹腔鏡では1泊2日の入院としています。
翌日からの経過は特に変わりはなく、痛みに関してもほとんど差はなく、大体のお子さんは術後2日くらいで気にならなくなるようです。
どちらの手術がよいかはお子さんの状態にもより、あまり小さい子(1歳未満)や陰嚢水腫の場合では腹腔鏡手術は難しい場合もあります
-
内科(初診)
-
総合内科
-
呼吸器内科
-
循環器内科
-
肝胆膵・消化器病センター
-
内視鏡内科
-
内分泌・糖尿病内科
-
腎臓病センター(腎臓内科)
-
脳神経内科
-
機能的神経疾患センター(機能神経外科)
-
リウマチ・膠原病・アレルギー科
-
外科
-
整形外科
-
脊椎センター・脊柱側彎症センター
-
心臓血管外科
-
脳神経外科
-
脳血管外科
-
皮膚科
-
小児外科
-
小児科
-
形成外科・美容外科
-
泌尿器科
-
眼科
-
耳鼻咽喉科
-
産科・婦人科
-
高精密度放射線治療センター
-
放射線診断科
-
救急センター(ER)
-
麻酔科
-
痛みセンター(ペインクリニック)
-
脳卒中センター
-
集中治療科
-
病理診断科
-
精神科
-
人間ドック・健診センター
-
看護部
-
診療看護師(NP)
-
放射線部
-
薬剤部
-
リハビリテーション室
-
臨床工学科
-
臨床試験センター
-
医療相談室
-
地域医療連携室
-
国際医療支援室
-
院内保育園「かもめ園」
-
内科(初診)
-
総合内科
-
呼吸器内科
-
循環器内科
-
肝胆膵・消化器病センター
-
内視鏡内科
-
内分泌・糖尿病内科
-
腎臓病センター(腎臓内科)
-
脳神経内科
-
機能的神経疾患センター(機能神経外科)
-
リウマチ・膠原病・アレルギー科
-
外科
-
整形外科
-
脊椎センター・脊柱側彎症センター
-
心臓血管外科
-
脳神経外科
-
脳血管外科
-
皮膚科
-
小児外科
-
小児科
-
形成外科・美容外科
-
泌尿器科
-
眼科
-
耳鼻咽喉科
-
産科・婦人科
-
高精密度放射線治療センター
-
放射線診断科
-
救急センター(ER)
-
麻酔科
-
痛みセンター(ペインクリニック)
-
脳卒中センター
-
集中治療科
-
病理診断科
-
精神科
-
人間ドック・健診センター
-
看護部
-
診療看護師(NP)
-
放射線部
-
薬剤部
-
リハビリテーション室
-
臨床工学科
-
臨床試験センター
-
医療相談室
-
地域医療連携室
-
国際医療支援室
-
院内保育園「かもめ園」