乳児血管腫(いちご状血管腫)に対するプロプラノロール内服治療

乳児血管腫(いちご状血管腫)に対するプロプラノロール内服治療

乳児血管腫は、皮膚の表面や内部にできる「赤あざ」の一種で、未熟な毛細血管が増殖してあらわれる良性の腫瘍です。見た目が赤く、いちごのような外観から、「いちご状血管腫」とも呼ばれます。出生直後には目立たない状態ですが、生後数日から1か月ころから赤みが出てきて、徐々に盛り上がってきます。皮膚表面に扁平に盛り上がる「局面型」、半球状に盛り上がる「腫瘤型」、皮膚の下に腫瘤がある「皮下型」の3タイプがあります。乳児血管腫は型と大きさにもよりますが、通常は5歳頃までに50%が、7歳頃までに70%が自然に消退してきます。しかし、範囲が大きかったり大きな皮下型であった場合には、部分的に赤みが残ったり、色は消えてもいったん膨隆した皮膚が縮むので周囲の皮膚とは質感が異なることがあります。大きくなる傾向が強い場合などで皮膚が伸びきってしまうと後遺症が残る可能性が高くなります。

乳児血管腫の自然経過

自然退縮後に残る後遺症

図・写真:(マルホ株式会社:乳児血管腫の薬物療法について 疾患・治療についての患者説明用資料より抜粋)

以前は多くは自然退縮すること、治療する場合は外科手術や、ステロイドなどの副作用の強い薬による治療など負担が大きいことから、出血や合併症を併発した場合などや目立つ部位で家族が治療を希望された場合に治療を行っていました(レーザー治療は以前から行われていましたが、特に腫瘤型や皮下型にはあまり効果がないと言われています。)。
2008年に高血圧や心疾患の治療薬として使用されていたプロプラノロールという薬が乳児血管腫に有効であることが報告され、2016年に国内で乳児血管腫に保険適応とされたプロプラノロール(ヘマンジオルシロップⓇ:マルホ株式会社)が発売され、その効果と副作用の少なさから広く使用されるようになり、現在の乳児血管腫の第1選択の治療となっています。しかし循環器系に作用する薬ですので投与は慎重に行う必要があり、投与開始時や増量時などには循環器系などの精査とモニタリングが必要とされます。

当院における治療

当院では治療前に小児循環器外来を受診して心疾患の有無をチェックし、問題がなければ1週間ごとに3回の日帰り入院を行い、体重あたりプロプラノロール1mgの少量から開始して副作用のないことを確認しながら治療量の3mgまで増量し、以降は外来で2週間~1か月に1回の通院で6か月を目安に内服治療を行います。
2019年7月から2022年7月まで30人以上のお子さんの治療を行い、シロップが飲めなかったり副作用で治療ができなかった子はいません。程度の差はありますが、全例で効果はみられています。気になる方はお気軽に相談して下さい。

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