子宮内膜症とは

通常は子宮内にある月経を起こす細胞が、何らかの影響で違う場所に生着し、局所の炎症や癒着を起こした状態を内膜症性疾患と呼びます。内膜細胞が生着する部位により病名が異なります。代表的な疾患として、

  • 卵巣に生着 → 内膜症性嚢胞(チョコレート嚢腫)
  • 子宮筋層に生着 → 子宮腺筋症
  • 腹膜に生着 → 子宮内膜症

以上のように病名がついています。ここでは、子宮内膜症に絞ってお話ししていきます。
子宮内膜症の主な症状は、月経時の極度の腹痛、月経以外での腹痛、排便痛です。女性ホルモンに反応して増悪していくため、妊娠を希望していない時期はピルで内膜症の進行を抑えることが可能です。

検査

エコー、MRI、腫瘍マーカー(CA19-9)

子宮内膜症と不妊症

子宮内膜症患者さんの半数が不妊症となるという報告があり、子宮内膜症は主たる不妊症の原因と言えます。不妊症となる理由として、

  1. 子宮内膜症が進行して、卵巣嚢腫や、癒着による卵管閉塞を起こしてしまう
  2. 骨盤内環境の変化(免疫能の異常や、炎症の賦活化)
  3. 排卵障害
  4. 卵子や胚の質の低下
  5. 卵管機能低下

が挙げられます。手術で改善できるのは①と②のみで、その他の要因は完全に治療することが困難です。

子宮内膜症の治療

子宮内膜症は強固な癒着を形成し、一度作られた癒着は手術でしか解除することができません。そのため、卵管閉塞がある場合は手術治療の適応となります。その際に、大量の生理食塩水で腹腔内を洗浄することで一時的に骨盤内環境を改善させることが可能です(劇的な改善が見込まれるわけではないので、洗浄のみの手術は行いません)。
月経痛の特効薬である低用量ピルは排卵を止めてしまうため、妊娠希望のある患者さんは使用することができません。妊活中は、一般的な鎮痛薬を処方することになります。
なかなか妊娠しない患者さんは、早めの生殖補助医療へのステップアップもご提案します。

なお、当院では子宮腺筋症に対しての手術療法は実施していません。

当院での取り組み

手術を行う場合、子宮内膜症の腹痛の原因である深部内膜症も安全な範囲で解除するように心がけています。不妊治療目的だけでなく、日常生活における症状の改善も見込んだ手術を行います。

手術のリスク

他臓器損傷(重度の内膜症を認める場合、リスクが高くなります)、術中・術後出血、創部感染、深部静脈血栓症、その他不慮の合併症。

術後について

術後、妊娠期間や、分娩方法に制限はありません。

診療科・部門