卵管閉塞、卵管水腫

卵管閉塞・卵管水腫とは

卵管は受精をする臓器であり、また受精卵を子宮まで届ける役割を果たしています。クラミジア感染や、子宮内膜症などが原因で、卵管が詰まってしまった状態を卵管閉塞と言います。さらに、卵管からは卵管液が分泌されており、卵管が詰まってしまうと逃げ場を無くした卵管液が卵管の中に溜まった状態を卵管水腫といいます。
卵管閉塞・卵管水腫は無症状で発症し、婦人科検診や不妊治療中に気付かれる例がほとんどです。妊娠希望がなければ、治療の必要はありません。

検査

エコー、子宮卵管造影、卵管通水・通気検査
当院では、より診断精度の高い、子宮卵管造影検査を実施しています。

卵管閉塞と不妊症

卵管閉塞は、女性不妊の60%を占め、最も頻度の高い不妊症の原因です。卵管の閉塞があると一般不妊治療(タイミング法、人工授精)での妊娠率は低下しますが、生殖補助医療(体外受精、顕微授精)の妊娠率には影響しません(卵管水腫がある場合を除く)。

治療 腹腔鏡下卵管形成術、腹腔鏡下卵管切除術

卵管閉塞の位置

卵管閉塞では、閉塞した部位によって、治療方法が異なります。図のように、卵管の子宮側での閉塞は近位部閉塞と呼ばれ、卵管の卵巣寄りの閉塞を遠位部閉塞と呼び、それぞれ治療法が異なります。近位部閉塞の場合、卵管鏡下卵管形成術の適応となり、遠位部閉塞の場合、腹腔鏡下卵管形成術の適応になります。

卵管水腫の場合、卵管の機能が破綻している可能性があり、卵管形成を行っても妊娠率が向上しないと判断された場合は、卵管切除の適応になります。
治療方針が複雑でわかりにくいので、フローチャートにまとめましたのでご参照ください。(当院では、卵管鏡下卵管形成術は実施しておりません)

治療方針のフローチャート

腹腔鏡下卵管形成術

この症例では、子宮内膜症により卵管が卵巣と癒着し、卵管が閉塞しています。

癒着を解放すると、卵管内容液が漏出し、卵管采(卵管の端)が剖出されます。

卵管采を翻転させるように糸と針で固定して終了です。

腹腔鏡下卵管切除術

腹腔鏡を用いて、図のように卵管のみを摘出します。卵管はホルモンを放出していませんので、摘出しても体調に変わりはありません。

当院での取り組み

正常な卵管内部は襞状構造がありますが、卵管水腫となると襞が消失します。卵管水腫を認める場合、腹腔鏡の最大拡大視野で内部構造を確認し、襞状構造が消失している場合は卵管摘出を行う場合があります。術前に患者様と方針を相談し、術中に方針を決定します。

卵管を摘出する際は、少しでも卵管が子宮に残ってしまうと異所性妊娠の原因となってしまうため、卵管が残らないような手術を心がけています。

いずれの手術も比較的小規模のため、創は小さく少なく綺麗にできるよう心がけています。

手術のリスク

術中・術後出血、創部感染、他臓器損傷、深部静脈血栓症、その他不慮の合併症。

特有の合併症

  • 腹腔鏡下卵管形成術:卵管再閉塞
  • 腹腔鏡下卵管切除術:術後異所性妊娠

術後について

術後、妊娠期間や、分娩方法に制限はありません。
摘出した卵管が悪性である場合があります。その場合、追加での治療が必要になる可能性があります。

診療科・部門