多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)

多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)とは

体質的にホルモンのバランスが崩れ排卵しにくくなり、月経周期に異常をきたした状態を、PCOSと言います。PCOSは若い女性の5〜10%が罹患し、原因の約80%は遺伝学的要因と報告されています。その他の原因として、最も多いのが肥満です。PCOSは不妊症だけでなく、将来的な子宮体癌のリスクにもなるため、周期的に月経を起こすことが重要になります。そのため、妊娠希望がない時期は低用量ピル、妊娠希望時は排卵を補助する治療を行います。

検査

エコー、女性・男性ホルモン検査、AMH

不妊治療とPCOS

肥満気味な方は減量してみましょう。減量のみで排卵が回復する場合もあります。目標は、BMI(体重÷身長÷身長)で28→25→23 と段階的に設定してみてください。急激な減量(1ヶ月で体重の10%以上)は、別に排卵障害の原因となるため、注意しましょう。標準体重の方は、減量の必要はありません。
PCOSの不妊治療には①投薬治療 ②腹腔鏡下卵巣多孔術 の2通りがあります。それぞれ説明していきましょう。

①投薬治療

クロミフェン(クロミッド)

月経3〜5日目から5日間服薬 1日50 mgから開始、150 mgまで増量可能
排卵改善率80%
副作用:多胎妊娠(10%)、子宮内膜の菲薄化、頸管粘液の減少

レトロゾール(フェマーラ)

月経3〜5日目から5日間服薬 1日2.5 mgから開始、7.5 mgまで増量可能
排卵改善率 90% クロミフェンよりも生産率が高いと報告されています。
副作用:多胎妊娠(5〜10%)、頭痛、めまい

FSH注射(ゴナールF、フォリルモン、uFSH など)

主に低用量漸増法を用います。詳細は主治医にご確認ください。
過剰に卵胞が形成される場合が多く、内服の刺激方に比べてキャンセル率が高いのが特徴です。

メトホルミン(メトグルコ、グリコラン など)

耐糖能を改善することで、排卵をしやすくさせる薬です。糖代謝異常(HOMA指数>2.5)を認める場合に、適応になります。
基本的に、他の卵巣刺激薬と併用します。単独で使用することはほとんどありません。

漢方薬

当帰芍薬散、柴苓湯、温経湯 などを体質に合わせて使用します。

②腹腔鏡下卵巣多孔術(ドリリング)

腹腔鏡を用いて、電気メスで卵巣に小さい穴を多数開ける手術です。PCOSの患者様の卵巣はAMHが高い傾向にあり(>5)、卵巣の機能を人工的に下げることで排卵の改善を図ります。卵巣刺激薬に反応しない患者様が適応となります。
排卵改善率 30〜90%(報告にかなり幅があります)

当院のこだわり

卵巣に孔を開けすぎると、卵巣機能が大幅に低下することがあります。事前にAMHと年齢から最適な孔の個数を設定しています。
比較的小規模の手術のため、最低限の創で行う方針としています。入院期間も1泊〜2泊と、早期退院が可能です。

手術のリスク

卵巣機能低下、卵巣出血、他臓器損傷、深部静脈血栓症、その他不慮の合併症。

術後について

特に注意点はありません。術後に一度AMHを測定し、過度な卵巣の障害がないかを確認します。

診療科・部門