卵巣嚢腫とは

卵巣に発生する嚢胞(図1)で、その罹患率は全女性の5〜7%程度と報告されています。卵巣嚢腫には良性から悪性まで様々な種類がありますが、ここでは良性嚢腫のみ説明していきます。
卵巣嚢腫は基本的に無症状で増大するため、検診や不妊治療の開始時に見つかることが多々あります。大きさが6cmを超えると嚢腫が破裂したり、捻れてしまうことがあり、手術を考慮することになります。緊急手術の場合、卵巣を摘出せざるを得ない場合もあります。
また、悪性腫瘍が否定できない場合は、いかなる場合であっても手術をご提案します。

(図1)

検査

エコー、MRI、腫瘍マーカー

卵巣嚢腫と不妊症

卵巣嚢腫があっても多くの方は排卵するため、不妊治療の一環として手術を要する例は多くありません。例としては、卵巣嚢腫が弊害で採卵ができない場合くらいでしょう。
卵巣嚢腫の摘出をすると、ほぼ全例で卵巣機能が低下してしまうため、不妊治療を行うにあたり逆効果となってしまうことがあります。そのため、妊娠希望のある女性の卵巣嚢腫手術は慎重に検討する必要があります。
生殖補助医療(体外受精や顕微授精)を行っている、もしくは検討している患者様で嚢腫の摘出を予定されている方は、十分に受精卵を確保したのち、移植前に手術を行うことも可能ですので、ご検討ください。

当院での取り組み

卵巣嚢腫は、正常な卵巣に接して成長していきます。手術では正常な卵巣をいかに傷つけないかが重要になります。

嚢腫のみを摘出する

卵巣嚢腫と正常卵巣の境を見つけるのはとても難しい作業です。そのため、じっくりと境界線を見極め、嚢腫のみを摘出します。

高温になるデバイスを極力使わない

200

産婦人科の手術では、電気メスなど高温になる道具が多数あります。それらで正常な組織を傷つけてしまうと、大切な正常卵胞まで焼かれてしまうため、好ましくない手術手技です。そのため当院では、手術用の止血剤やガーゼを用いて、極力組織を焼かずに手術を行います。

手術のリスク

卵巣機能低下、卵巣嚢腫内容の漏出による術後の発熱、術中・術後出血、創部感染、他臓器損傷、深部静脈血栓症、その他不慮の合併症。

術後について

術後、妊娠期間や、分娩方法に制限はありません。
摘出した腫瘍が悪性である場合があります。その場合、追加での治療が必要になる可能性があります。

診療科・部門