内視鏡内科で行っている治療、検査の一覧
内視鏡内科では食道がん、胃がん、十二指腸がん、大腸がんの内視鏡治療を行っています。方法は以下の2つに分けられます。
- スネアと呼ばれる金属製の輪を使用して切除する方法(ポリペクトミー、EMR)
- 電気メスを用いる方法(ESD)
「スネア」と呼ばれる金属の輪でポリープの根元を縛り、電気を流して切除します。日帰りで行える有用な治療法ですが、大きさや形状によってはスネアで切除出来ません。その場合は、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)が必要になります。
ポリペクトミー、EMR (内視鏡的粘膜切除術)
長所:多くの場合、日帰りで治療出来る。
短所:大きな病変は切除出来ない(目安は2cm程度まで)。
<EMRの手順>(※ポリペクトミーはEMRの手順から生理食塩水の注入を省略する)。
約3cmの大きな大腸ポリープです。
スネアでポリープの根元を縛り、電流を流して切除します(出血予防のためポリープの根元にクリップをうっています)。
切除した検体です。病理検査で早期大腸がんと診断されました。がんは完全に切除されており、治癒と判定されました。
食道・胃・十二指腸・大腸の早期がん、腺腫などを対象とする内視鏡治療です。ポリペクトミー、EMRでは切除困難な大きな病変であっても、ESDでは治療が可能です。おなかを切る必要がなく、外科手術と比べ体への負担が軽いのが最大の利点です。
術後の痛みは基本的にほとんどなく、デスクワークであれば退院の翌日から復帰出来ます。
ESD (内視鏡的粘膜下層剥離術)
長所:大きな病変でも切除出来る。
短所:入院が必要。
入院期間は食道・胃・大腸は5日間、十二指腸は7日間が目安です。
患者様の都合に合わせて出来るだけ柔軟に対応しています。
<ESDの手順>
湘南藤沢徳洲会病院のESD件数
ほとんどの患者様が5日で退院されており、外科手術より早く退院出来ます(ESDは、1週間程度の入院とする病院が多いです)。
入院の際は、個室、4人部屋などご希望に応じて選ぶことが出来ます。
生理食塩水の中で行うESDです。水中では光の反射による視野障害がなくなり、自然な拡大効果もかかるため、鮮明な視野が得られます。
ケースバイケースで従来のESDと使い分けています。
この方法は2018年に当科が原著形式の英語論文として発表し、消化器内視鏡のトップジャーナルであるGastrointestinal Endoscopy(GIE)に掲載されました。
全国的にもまだ出来る病院が少ない十二指腸ESDを提示します。十二指腸ESDではUnderwater ESD(生理食塩水の中で行うESD)が有効です。
約25mmの十二指腸腫瘍を認めます。
病変の範囲を診断し、周りに電気メスでマークを付けます。
粘膜の下に液体を注入して病変を浮かせます。
マークの外側の粘膜を電気メスで切開。
粘膜の下の組織(粘膜下層)を電気メスで剥がしているところです。
十二指腸の粘膜下層は非常に薄く筋層を損傷し穿孔するリスクが高いとされています。
Underwater ESD(生理食塩水の中で行うESD)を行うことで光の反射がなくなり、拡大効果もあるため、精密に剥離することが可能になります。
穿孔(壁に穴があくこと)などの問題なく、病変を切除しました。
切除後は潰瘍が出来ますが、1~2ヵ月で治ります。十二指腸ESD後は、遅発性穿孔予防のため、クリップなどで治療後の潰瘍を完全に閉じるようにしています。
切除した検体をピンで伸ばして、ホルマリンで固定後、病理診断を行います。中央に見える赤く隆起している部分が腫瘍です(青い色素をかけています)。
病理診断で腫瘍は完全に切除されており、治癒と判定されました。
のど(咽頭、喉頭)のがんの治療は、基本的に耳鼻咽喉科の領域です。
しかし、咽頭がんに関しては、胃カメラを利用した治療が可能になったこともあり、胃カメラを行う医師が治療にかかわる機会が増えて来ています。
胃カメラを利用した咽頭がんの治療には色々な方法がありますが、当科では内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行っています。
ESDでは発声機能を残すことが可能であり、患者様にとっては負担の少ない治療です。
全身麻酔下で、彎曲型喉頭鏡と呼ばれる処置具を用いて視野を確保し、ESDを行います。
以下、咽頭がんに対するESDの手順をご説明します。
黄色い矢印で示す部分が少し赤くなっています。この部分が咽頭癌です。非常に分かりにくい病変です。
ヨードと呼ばれる薬液で染色すると、白い矢印で示す部分に咽頭癌(周りと色の違う部分)が浮かび上がってきます。
咽頭癌を取り囲むように、電気メスで白いマークを付けました。治療の際の目印になります。
病変の下に生理食塩水を注射して浮かせた後、電気メスでマークの少し外側を切開します。
病変の下の組織を電気メスで剥がしていきます。
病変の切除を完了しました。白い矢印の内側が切除部位です。キズが出来ますが、時間の経過とともに自然に治って閉じます。
体外に摘出した咽頭癌をピンで張り付けて伸ばしています。
左(通常観察):白い点は、病変のすぐ外側に電気メスで付けたマークです。全周性にマークが認められ、切除予定だった範囲を切除できたことが分かります。
右(ヨード染色後):薬液(ヨード)で染色すると、黄色矢印内に色の違う部分が出てきます。この部分が咽頭癌です。病理検査(顕微鏡での分析)で咽頭癌は完全に切除されており、治癒と判定されました。
全周性の食道がんに対するESDです。
がんの範囲を分かりやすくするため、食道にヨード染色を行っています。ピンク色に見えるところに食道がんがあります(食道の全周を占めています)。
病変の周りに目印のため、電気メスで白いマークを付けています。
粘膜の下に液体を注入して病変を浮かせます。
病変の外側を電気メスで切開したところ。
粘膜の下の組織(粘膜下層)を電気メスで剥がしているところです。
全周性のESD後です。穿孔(壁に穴があくこと)などの問題なく、病変を切除しました。切除後は潰瘍が出来ますが、1~2ヵ月で治ります。
食道は元々細いため、大きな病変を切除した後は、潰瘍の治癒に伴い食道がより細くなり、ご飯が通らなくなる場合があります。近年、ステロイドの注射で細くなるのを予防出来ることが分かって来ました。
当科でも広範な食道ESD後はステロイドを注射し、食道が細くなるのを予防しています。
切除した検体です。
切除した検体を展開し、ピンで伸ばしてヨード染色をしています。黄色いところが食道がんの部分です。ホルマリンで固定後、病理診断を行います。病理診断で腫瘍は完全に切除されており、治癒と判定されました。
胃潰瘍の瘢痕を合併した早期胃がんに対するESDを提示します。
胃潰瘍瘢痕によるひだの集中像を認めます。
高度な線維化のため、難易度が高いと予想されます。
青い色素をかけて、がんの範囲を診断した後、電気メスで回りにマークを付けています。
粘膜の下に液体を注入した後、マークの外側の粘膜を電気メスで切開します。
粘膜の下の組織(粘膜下層)を電気メスで剥がしているところです。胃潰瘍の瘢痕による線維化があり、剥がせるスペースが限られています。筋層と粘膜下層の境界が分かりにくいため、慎重に剥離を進めます。
穿孔(壁に穴があくこと)などの問題なく、病変を切除しました。切除後は潰瘍が出来ますが、1~2ヵ月で治ります。
切除した検体をピンで伸ばしています。ホルマリンで固定後、病理診断を行います。病理診断で腫瘍は完全に切除されており、治癒と判定されました。
約4cmの高度な線維化を伴う早期大腸がんに対するESDを提示します。当科で考案したUnderwater ESD(生理食塩水の中で行うESD)が有効でした。
重症の潰瘍性大腸炎の既往があり、高度な線維化により難易度が高いと予想されました。
粘膜の下に液体を注入して病変を浮かせます。
病変の外側の粘膜を電気メスで切開したところです。
粘膜の下の組織(粘膜下層)を電気メスで剥がそうとしていますが、高度な線維化で筋層との境界がよく分かりません。このままでは筋層を傷つけて穴をあけてしまうリスクがあります。
当科で考案したUnderwater ESD(生理食塩水の中で行うESD)を行うことで光の反射がなくなり、拡大効果もあるため、鮮明な視野が得られ粘膜下層と筋層の境界が分かりやすくなります。筋層を傷つけないように、精密に剥離することが可能になります。
穿孔(壁に穴があくこと)などの問題なく、病変を切除しました。切除後は潰瘍が出来ますが、1~2ヵ月で治ります。
切除した検体をピンで伸ばしています。ホルマリンで固定後、病理診断を行います。病理診断で腫瘍は完全に切除されており、治癒と判定されました。
2014年に保険適応となった新しい治療です。粘膜下腫瘍、ESDが困難な早期がんなどを対象とします。
腹腔鏡で消化管の外から、内視鏡で消化管の中からアプローチすることで正確に腫瘍の範囲、位置を確認して切除します。切除範囲を最小限にすることが出来るため、術後の機能障害を抑えることが出来ます。
外科と連携し、この治療に取り組んでいます。術後管理は外科が行っており、入院期間は2週間程度です。
(Hiki, et al. Surg Endosc 2008; 22: 1729-35より引用)
食道がん、胃がん、十二指腸がん、大腸がんの治療方針はがんの深達度(がんの根の深さ)、広がり、組織型、転移の有無などで変わってきます。
拡大機能が付いた内視鏡と、必要に応じて超音波内視鏡を併用し、がんの根の深さ(深達度)、広がり、組織型などの診断を行います。転移の有無はCTなどで確認します。
これらの検査は、基本的に全て外来で行うことが可能です。
消化管の粘膜下腫瘍を対象とします。超音波内視鏡で腫瘍を確認し、針を刺して組織を採取します。
粘膜下腫瘍は通常の内視鏡検査では組織を採取することが困難ですが、EUS-FNAを行うことで組織を採取出来る確率が上がり、診断に有用です。採取された組織を元に診断し、治療方針(手術、経過観察など)を立てることが出来ます。
基本的に1泊2日の入院で行っています。
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