MICS(低侵襲心臓手術)

MICSとは

  • MICS(ミックス)とは従来から行われている胸骨正中切開 【図1A】とは違い、肋骨の間を切って小さい傷 【図1B】で行う手術です。
  • 当院の低侵襲僧帽弁形成術(MICS-MVP)は3D内視鏡を使っています。心臓を立体視することで小さな創でも高精度の僧帽弁形成手術が可能です【図2】。
  • 通常の手術よりも手術後の回復が早く、手術後約5日で退院でき、早期の社会復帰を目標にしています。
  • 胸骨正中切開 【図1A】胸骨正中切開
  • MICS(右助間開胸) 【図1B】MICS(右助間開胸)
    MICS(右助間開胸)MICS僧帽弁手術後
    *患者さまの許可を得て掲載しております。

低侵襲僧帽弁形成術(MICS-MVP)【図2】

低侵襲僧帽弁形成術(MICS-MVP)

MICSの特徴

小切開アプローチ

  • 術式にもよりますが、小切開アプローチにより傷の大きさは3~5cm程度です。乳房の下を切開するので術後も傷が目立ちにくいです。

使用する医療機器(3D内視鏡、MICS専用の手術器具)

  • 3D内視鏡を使用します。外科医はディスプレイを見ながら術野を立体的に見て手術を進めることができます。
  • MICS特有の細く長い手術器具を使用することで、小さな創から心臓にアプローチすることが可能です。

適応疾患

MICSで治療可能な疾患

  • 心臓弁膜症(僧帽弁、大動脈弁、三尖弁の手術)
  • 虚血性心疾患(冠動脈バイパス術)
  • 不整脈(Maze手術、左心耳切除術)
  • 先天性心疾患(心房中隔欠損症(ASD)など)

適応の判断基準や制限

  • 患者さまの状態によってはMICSよりも通常の正中切開の方が良い場合があります。無理にMICSで行うと、大きな合併症につながることがあります。我々はMICSにこだわりすぎることなく、患者さまの安全第一で手術を行っています。詳細は外来でゆっくり説明させていただきます。

MICSのメリットとリスク

メリット

  • 小さな切開により傷が目立ちにくい。
  • 術後の疼痛が少ない。
  • 入院期間が短い。
  • 術後の回復が早く、早期の社会復帰が期待できる。

リスク

  • 患者さまの体型によっては非常に視野が悪くなることがある。
  • 出血した場合に正中切開と比較して止血が難しいことがある。
  • 手技が複雑になると手術時間が長くなることがある。

手術の流れ

MICS手術を受けるまでのステップ

  1. 初回診察と検査
    • まずはお電話で通常の心臓血管外科外来を予約して下さい。「受診方法について」をお読みください。
      受診時には心エコーなど各種検査を行います。
  2. 担当医は患者様がそもそも手術をする必要があるのか、しばらく外来でフォローしていけば良いのかを判断します。
  3. 手術が必要と判断した場合、実際の手術法について説明します。この時にMICSが可能かもお話させていただきます。
  4. かかりつけ医に他院で手術が必要と言われた方、MICSが可能かなどセカンドオピニオンも通常の心臓血管外科外来で対応しています。

手術当日の流れ

  1. 朝から手術を行います。手術は全身麻酔で行います。午後には手術が終わり、人工呼吸器が外れるのはその日の夜か翌朝になります。
  2. 術後1日目から食事が摂れます。可能なら立位訓練、足踏みの訓練やリハビリを始めます。
  3. 術後5日目で創部の状態など問題なければ退院となります。
  4. 退院後、約2週間後に外来を受診していただきます。
  5. その後は数か月に一度の外来受診で内服薬の調整や心エコー検査等をフォローします。

術後のケアと回復過程

  1. 退院後は特に制限はありません。軽い運動や入浴も可能です。
    自宅療養をして徐々に体力を回復させます。仕事の再開の時期などは担当医と相談して決めましょう。

よくある質問(FAQ)

MICSは全ての患者さんに手術可能ですか?

  • 患者さんの病態や既往症等によっては正中切開をお勧めすることがあります。手術は安全第一で行っています。患者様ごとに対応は異なりますので外来で詳しくお伝えいたします。

通常の手術と比べて術後の痛みはどうですか?

  • 痛みの感じ方は人によって違いますが、肋骨を拡げないために痛みは軽く済む方が多いです。

手術は全身麻酔ですか?

  • 全て全身麻酔で行いますので、手術中は意識、記憶は全くありません。痛みを感じることもありません。術後にゆっくりと麻酔が切れて少しずつ目が覚めてきます。

費用について、保険適用はありますか?

  • 通常の心臓手術と同様に健康保険が適応されます。金額の詳細についてはこちらと病院医事課で説明をさせていただきます。

手術後に注意すべきことは何ですか?

  • 特に生活の制限はありません。
  • 内服薬は退院時にお渡しします。
  • 痛みがなければ軽い運動も再開できます。

患者様へのメッセージ

  • MICSは、傷が小さいという見た目のメリットだけでなく、3D内視鏡を活用し高精度の手術を可能にします。一方で、患者さまごとの病態に応じた最適な手術法を慎重に判断し、安全性を最優先に手術を行います。外来で詳しくご説明しますので、受診いただきお気軽にご相談ください。
  • 当院は徳洲会グループであり、関連病院の名古屋徳洲会病院細羽先生にご指導をいただいております。MICSの経験豊富な細羽先生の知識と技術を基に、チーム全体で治療を行っています。

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