代表的な疾患について

痔について

『神経のある痛い部分を切らないで治す最新手術 PPH法だから日帰り手術が可能に!』
『変だな?と思ったら恥ずかしがらずに診せに行こう』

「二人に一人は痔主」と言われるほど、痔はポピュラーな病気です。しかし、よくひらがなで書く「ぢ」という文字(本当は間違いで「じ」が正解)が暗に意味するような地道なイメージ、されに漢字で書く「痔」という文字が語るように、やまいだれに寺と書き、やはりじっと我慢しなければならない病気であるというイメージが強く、どーしても病院に診せに来るのが遅れてしまう。命に関わらない病気かつ人前では話しにくい、あるいは見せにくい病気のであることも、病院離れに拍車を掛けています。
しかし、ひどい「内痔核」の場合には手術後にバラ色の人生が待っていることも多く経験しますし、「痔」だとばかり思っていたら実は癌だったというケースもあります。
是非「変だな?」と思ったら一度診せに来てください。

内痔核について

「痔」といって主に治療の対象となるのは「内痔核」のことです。この原因は、何はともあれ肛門部に過度の緊張をかけ続けることで起こります。その最たる原因が「便秘」です。
ですから規則正しい排便習慣で予防できます。また暖めるなど肛門部の血液循環を改善させることも治療のひとつになります。

「内痔核」は以下の四つの段階に分けられます。
このうち、一般的には 1-2 度までが保存的治療、3-4 度が手術が必要などと言われますが、必ずしも決まりではありません。

痔の保存的治療

  1. まずは入浴(血液循環を良くする)
  2. 便秘をしない(下剤を飲む)
  3. 肛門を清潔にする(排便後に洗浄する)
  4. 坐剤の軟膏を使用する(各種)

痔の進んだ治療法

  1. 「ジオン注」による硬化療法
    注射を内痔核に打ち込むことで固めてしまう方法です(四段階注射法)。切り取るわけではないので痛みが少ないです。ただし、脱出がひどい場合にはジオン注では治療が難しいため、やはり切除手術が必要になります。
  2. 「PPH法」手術
    「ジオン注では完全には治らない?」「やはり手術が必要?」「痔の手術って痛いんでしょ?」そんな心配はご無用です。 「PPH法」手術はいままでの常識を覆す治療法です。つまり神経に過敏な肛門部分の切除 は行わず、感覚のない部分を切除することにより治療するので、痛みがないのです。
肛門部
図: 肛門部の解説

「肛門」は歯状線により分けられている。
もともと「直腸」である内側の部分には感覚がなく、もともと「皮膚」である外側の部分には感覚がある。

内痔核
図: 内痔核の解説

「内痔核」は歯状線より内側から出てきます。
ですから出血や脱出はありますが、軽症だとあまり痛みはありません。

従来法
図: 従来法の解説

全世界でもっとも行われている痔核根治術で、とてもよい手術ですが、図のように感覚の
ある歯状線より外側の部分も切除することになるので術後に強い痛みがあります。

PPH法
図: PPH法の解説

「PPH法」の優れているところは、図のように特殊な器具を用いて歯状線よりも内側ですべてを切除するために術後に痛みがないのです。しかも全体的につり上がりますので、しまったお尻になります。
「従来法」でも日帰り手術はできますが、「PPH法」の方が痛みがない分、より良いです。
日帰りを勧める最大の理由は術後の痛みに対する対策のためです。痔の手術後の痛みを取るのに最も有効なのは、「温かいお風呂に入ること」です。痛み止めなど気休めです。
では気が済むまでお風呂に入るためにはどーしたらいいでしょうか?自宅に帰って、自分のお風呂に入る、それしかないのです。ですから当院では日帰りを強くお勧めしています。
悩んでないで日帰り「PPH法」でしまったお尻になりましょう!

現在、胆のう結石症(胆石)の手術は2泊3日程度の入院が必要となります

欧米ではポピュラーな病気

「胆のう結石症」(以下「胆石症」) は、その名の通り「胆のうの中にできた石」のことをいいますが、大変ポピュラーな病気です。欧米では10人に1人は持っているといわれていて、これらの約 3割の方が手術になっているといわれています。逆に言うと約7割の方が、胆石を持ったままお亡くなりになってるいうことになり、必ずしも手術をしなければならないわけではありません。

胆のう結石症のできやすい人できにくい人

胆石のできやすい方は、太っている(Fatty) 、40-50歳代(Forty-Fifty) 、女性(Female) 、たくさんお産をされた方(Fertile) 、(白人(Fair) )などと英語の頭文字をとって4F(5F) などといわれていて、日本でも、できやすい石の種類が若干異なり完全には当てはまりませんが、大方同様なようです。

イラスト: 胆のう結石症のできやすい人できにくい人

胆のうと胆汁(たんじゅう)

なぜ胆石ができるのかを簡単に説明しましょう。ただそのためには、少々解剖や生理学について学んで頂かなければなりません。
まず、主役は「胆汁(たんじゅう) 」という汁になります。これの特徴ですが、次のようなことがあげられます。

  1. 肝臓(かんぞう)がつくる汁です(注意:胆のうが作るものではありません)
  2. 黄褐色で便(うんち)の色のもとになります
  3. 脂肪吸収のお手伝いをします
  4. 非常に苦いです(臥薪嘗胆)
イラスト: 胆のうと胆汁

胆のうは、まさに茄子のよう大きさ・形なのですが、図のように肝臓の下にペタっと貼りつていて、よく見ると肝臓と十二指腸をつなぐ胆管(たんかん) という管の真ん中あたりから出た枝にできた袋となっています。

胆のうの仕事と胆石

胆のうの仕事はといいますと、胆汁を濃縮して蓄えて、必要に応じてそれを排出して脂肪吸収のお手伝いをよりよくすることです。つまり、胆のうはなくなっても、脂肪食に対して若干下痢しやすくなる場合がありますが、それほど困ることはないのです。

その胆のうの中に溜まっている胆汁中のコレステロールが多かったり、更年期などでホルモンバランスがみだれたり、肥満や妊娠などの影響でお腹の圧力が高いため完全な排出ができなくて泥のような溜まりができたりで、胆のうの中に石が形成されることがあります。その正体こそが「胆石」なのです。

イラスト: 胆石発作!

ほとんどの胆石は悪さをしませんが、悪さをするとやっかいです。

ちょうどラムネの瓶の中のビー玉を想像してください。石ですから胆のうの中をコロコロと動くわけですが、これが出口のところにはまってしまったらどうでしょう。

胆のうが収縮して濃い胆汁を排出するメカニズムは自律神経に操られています。ですから、みなさんが胆のうをつぶしたくてもつぶれませんし、つぶしたくなくても勝手につぶれます。

出口に石がはまっていることも知らずに、天ぷらなどの油物を食べたらどうなるでしょう。自律神経の命令で胆のうはつぶれようとしますが、残念ながら中身を排出できません。しかし、そんなことお構いなしに胆のうはつぶれようとしますので、胆のうの皮がひっぱられて転げ回るような痛みが起こるのです。

その痛みの程度も様々で、少し右のあばらの下あたりがずーんと重い感じがするものから、脂汗をかいてのたうちまわるほどのものまであります。背中や右肩が痛くなることもよくあります(神経の通り道が一緒のため)。

こじらせると、胆のうの中に溜まっている胆汁が入れ替わらないためバイ菌が繁殖して熱が出てきます。これを「急性胆のう炎」といいます。

さらに石が胆管の方に落ちるとすべての胆汁の通過障害が出るために「胆管炎」となり、行き場のなくなった胆汁が血液にしみ出し、体中が胆汁色になる「黄疸(おうだん)」となってしまいます。

以上のようなことが起こってしまったら治療をしなければなりません。

胆石の診断

「胆石」を診断するには、いろんな検査は必要ありません。腹部超音波検査(いわゆるエコー) だけで95%診断がつきます。採血やMRIなどの他の検査は、重症度の評価や手術をするための準備あるいは他の病気じゃないことを確認するために必要になります。

胆のう結石症の治療

それではいよいよ治療についてお話しします。
先に言ったような「腹痛」などの症状がある場合には原則的に手術をすすめます。(症候性胆石症)
では、症状がない胆石(無症候性胆石症) は手術をしなくてよいかというとそうではなく、一般的には以下の場合に手術がすすめられています。

  1. 石が大きい場合(2cm以上) 、あるいは石で充満している場合
  2. 胆のうの機能が消失している場合(陶磁様胆のう)
  3. 胆のう癌が疑わしい場合

他にも、若くて元気で手術のリスクが少ない人や糖尿病を患っている人にもすすめることがあります。
手術以外の治療法もありますので以下にてご紹介しておきましょう。

結石溶解療法

「胆石を飲み薬で溶かしてしまいましょう」(結石溶解療法) という治療方法です。欧米では15%ほどの方に行われ、その約半分の方に2年ほどで効果が出るという成績です。しかし、日本人に多いタイプの石は溶けにくく、かりに2年越しに溶けたことが確認できても薬をやめたらまた再発してしまいます。残念ながら日本ではほとんどやられておりません。手術に対して危険性が高い患者さんに仕方なく用いられるのをよく見かけます。

ESWL(体外衝撃波腎結石破砕装置)

これは「衝撃波で破砕してしまいましょう」という治療方法です。これはよく「腎臓結石・尿管結石」に使われる治療です。これを胆石に使うというのです。結石溶解療法と一緒に行うのが基本です。しかし、砕かれて小さくなった石は、尿路の結石では膀胱から「おしっこ」に出て行ってくれるのですが、胆石ではそうは行かない場合があります。

イラスト: 総胆管結石

胆のうから総胆管(そうたんかん)に落ちた石を「総胆管結石」と呼びますが、それが総胆管と十二指腸のつなぎ目のところ(十二指腸乳頭) にひっかかってしまうのです。砕かれたビー玉がまた別のところをつまらせてしまうことになるのです。胆のうの出口にはまっても「胆のう炎」程度ですみましたが、総胆管の出口にはまると恐ろしい「急性胆管炎」になり、行き場のなくなった胆汁は血液に逆流して「黄疸」となってしまいます。ですからESWLも特殊な場合を除いて行われません。もしも「総胆管結石」がある場合には、胃カメラを用いて逆に十二指腸乳頭側から石をひっぱり出すことがあります(内視鏡的逆行性胆道造影・採石術:ERC)。

よって究極の「胆石症」の治療方法はやはり手術になるわけです。

手術

「胆のうをまるごと取ってしまいましょう」(胆のう摘出術) という治療方法です。「えっ?胆のうを取っちゃうんですか?」「石だけ取るんじゃないんですか?」という声が聞こえて来そうですが、よーく考えてみてください。一度、胆石ができてしまうような胆のうですから、かりに石だけ取ったとしてもまたできてしまいます。胆のう癌の発生の問題もありますので、胆のうをまるごと取ってしまう必要があるのです。

そこでみなさんの気になる手術の方法の問題が出てきます。

いわゆる「お腹を切る開腹手術(かいふくしゅじゅつ) 」と「お腹に穴を開けるだけでやる腹腔鏡手術(ふっくうきょうしゅじゅつ) 」です。

開腹手術 腹腔鏡手術
(きず) 大きくて目立つ(15-20cm) 小さくてきれい(0.5-1cm)
痛み とても痛い ほとんど痛くない
食事 3-4日してお腹が動いてから 手術後すぐ2-3時間で食べられます
イラスト: 開腹手術 イラスト: 腹腔鏡手術

以上のように、腹腔鏡手術は患者さんに大変負担の少ない手術であることがわかります。腹腔鏡手術には、一部に賛否両論とところがありますが、こと「腹腔鏡下胆嚢摘出術」に関しては歴史が古く(世界では1987年、日本では1990年ごろより開始) 、すでにもう安全性が確認されていますので心配はいりません。

ただ腹腔鏡手術に不向きの場合がありますので、これはご理解ください。

  • 心臓や肺の機能が極端に悪い人(お腹を膨らますことができないのです)
  • 肝硬変などで血が固まりにくい人(出血が止められないことがあるので)
  • 妊娠中の人
  • お腹に水がたまっている人
  • 上の方のお腹の手術をしたことがある人(胃潰瘍や胃癌の手術など)
  • 乳幼児
  • 著しい肥満の人
  • 「総胆管結石」のような胆のう以外に石がある人(胆のうをとっても解決しない)
  • 癒着がひどい場合(お腹の中をのぞいてみないとわからないことが多いです)

以上のような問題があっても場合によっては「腹腔鏡手術」ができる方はいらっしゃいますので、それは担当の先生とご相談してください。

それではここで「日帰り手術」が行われる主な疾患の説明しましょう。そこにはなぜいままでできなかった日帰りができるようになったかについても触れてみます。

『メッシュを使うテンションフリーな手術だから日帰りが可能に!』

『どうせ手術するなら、今注目のクーゲル法で!』

ヘルニアは脱出の意味

そもそも「ヘルニア」と言いましても、「脱腸」と異名を持つ「そけいヘルニア」から、よく「腰痛」で耳にする「椎間板ヘル ニア」、はたまた「脳ヘルニア」という命に関わる病気までいろいろあります。もともとはラテン語で「脱出」を意味しますので、ひとことで「ヘルニア」と 言ってもいろいろあるわけです。

さて今回お話しする「そけい(鼠径)ヘルニア」ですが、子供の病気というイメージが強いようですが、むしろ大人に多い、治療法に必ず手術が必要となる代表的な病気であります。かなりメジャーな病気と言えるでしょう。

イラスト: ヘルニア

今後医療はますます進歩していくわけですが、医師の間での冗談で「脱腸と痔がある限り外科医は 食いっぱぐれることはないでしょう」とまで言われています。しかし、これまでは入院の煩わしさや手術の痛さなどから治療を敬遠し、放置したままの人も多かったようです。
ところがつい最近、某テレビ番組で「本当は怖いそけいヘルニア」なんて放送をやったものですから、突如として治療を希望される患者さんが 急増しまして、本当にテレビの威力はすごいものだと思い知らされました。そんな中で、患者さんの身体への負担が少なく、効率的な日帰り手術を行う当院の治療が注目を浴びているのです。

そけいヘルニアの症状と原因

イラスト: 脱腸

「そけいヘルニア」は、昔から「脱腸」とも呼ばれ、本来、閉じられているはずの鼠径管(そけいかん:ももの付け根)というトンネルを通って、腸などの臓器が出てくる病気であります(腸があまっているわけではありません!)。大人では50-60歳代に多く、男女共に見られますが、身体の構造から男性に多発しています。はっきりした原因はいまだ確定していませんが、これまでは腹圧が高くなるためなどと言われておりました。今では何らかの原因で、組織そのものが弱くなってくるためと考えられています。

そけいヘルニアの治療法

治療法はそのトンネルの出口を塞ぐわけですが(腸を取るのではありません!)、その方法としてつい最近まで、ほぼ百年前と同じような手法が行われていました。自分の組織を引っ張りながら縫い合わせ、中から腸が飛び出さないようにするという手法です(筋肉と靱帯を合わせる)。この方法だと、弱くなっている組織を再び使って修復するため、再発率がどうしても高くなります。しかも、自分の組織どうしを引っ張って縫い合わせるため、治療自体に痛みが生じてしまいます。

そこで、人工的な補強手段が検討されるようになり、具体的には、身体に影響のない合成樹脂製のメッシュ(網)を患部にあてがい固定する方法が行われるようになったのです。弱くなった組織自体を使うわけではありませんから、長期にわって患部が補強されることになったわけです。再発率も、これまでの手術が10%強なのに対して、1%以下と格段と低くなっています。また手術では、患部の組織を引っ張るようなことはないので、引きつった痛さも起こらない、いわゆるテンションフリーの手術となったのです。

イラスト: クーゲルパッチと従来メッシュ

そして、さらにそのメッシュを内側から当てて補強しようと考案されたのが、今話題の治療「クーゲル法」であります。植木鉢がいい例でしょう。植木鉢の底に下からお皿をあてるのと、鉢の中に内蓋を落としたのとを比べて、植木鉢の中に水を入れた時に丈夫なのはどちらだと思われますか?おそらく皆さん、後者と思われたはずです。これがクーゲル法と同じ原理です。内側から形状記憶メッシュを幅広くあてるので、より丈夫になったのです。従来の外からメッシュをあてる方法(リヒテンシュタイン法)と比べてクーゲル法には他にも利点があります。

イラスト: 植木鉢の例
  1. 内側からあてるので補強がより強固で、術後早期に運動ができる
  2. 大腿ヘルニアという別のヘルニアも同時に治療できる
  3. 傷が小さく、術後の違和感も少ない。(メッシュが奥に隠れるため)
  4. もともとのそけい部の組織を壊さないで手術ができる。(裏の手術のため)

ただし、欠点もあります。実は、手術が従来のリヒテンシュタイン法よりも難しく習得するのに困難を要するのです。ですから、まだまだクーゲル法を敬遠している施設も多くあります。その点では当院は十分な症例を経験しこなしている数少ない病院でありますので、ご安心ください。

「そけいヘルニア」で悩んでいらっしゃる場合に、まず手術をやる・やらないの問題で迷うという時代はもう過ぎ去っています。今は、どこでどのような手術を受けるかということが重要な課題である時代になっているかと思われます。その点では、現在のところこのクーゲル法のできる施設でやってもらうのが最善と考えますが、いかがでしょうか?

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